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企業価値(3)

企業価値の考え方は、会計や経理の考え方より、ファイナンスの考え方に由来する。

会計や経理は、基本的に、過去の出来事(イベント)の実績を記録する。現在の複式簿記の考え方では、ストックとフローの変化という形で二面的に記録する。典型的なのは、売上というフローがあると、それに対して現金というストックが増える、または売掛金というストックが増えるという具合である。

ファイナンスの考え方は、時間を大切にする。あと、非常に大切なのはスプレッドという考え方である。

時間に関していうと、例として、今日の100万円と一年後の100万円は価値が違うということがある。一年後の100万円は、今日の98万円と同じ価値かもしれない。また、今日の100万円は一年後の103万円と同じ価値かもしれない。会計にはそんな考え方を全面的には取り入れていないが、ファイナンスではそれが考え方の全てである。

また、スプレッドとは何かというと、ファイナンスにおいては生きるか死ぬかを意味する言葉だと思う。スプレッドがプラスであることが非常に大事だ。ファイナンスをすると、何も無い所から価値を産み出せる。スプレッドがプラスである限りは。

あなたが何か事業を始めたいとする。しかし、あなたは無一文だとする。誰かが100万円貸してくれると言う。ただし年利3%で。一年しか事業をしないとする。あなたはその借りた100万円事業に使って年利5%増やしたとする。すると一年後、あなたは105万円を手持ちとして、103万円を返すので、2万円が手元に残る。良い結果だ。理由は事業リターンの5%が資本コストの3%を2%上回っていたからだ。この2%がスプレッドと言うことである。

この極端な企業の単純化された例では、一年後の企業価値は、103万円を返済する前の時点では、105万円、負債価値は103万円、株主価値は2万円となる。

103万円の負債を返済したあとは、企業価値は2万円、負債価値は0万円、株主価値は2万円となる。

いずれにしても、あなたは無一文から一年後に2万円の株主価値を産み出したことになる。

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